自然に流れる

流れるままに記録して、それを遠くから眺めてみたいのです


妊娠と流産3-子宮内容物除去手術

手術を翌日に控えた日曜日の晩、古い友人から電話があった。

久しぶりに会おうと言われていたのだが、

具合が悪いと断っていたので、心配してくれたのだ。

 

その友人も、流産の経験があり、

進行流産で不全流産だった為、手術を受けたという。

友人は自分の手で胎嚢を受けたのだった。

私はその友人がそれで納得できたのか、一番知りたかった。

しかし、友人の答えはずっと残るショックの方が大きいようだった。

それに、痛みもものすごかったと言う。

 

ネットではいろいろな体験を読んでいたが、

直接、友人からその話を聞くのではやはり説得力というのか、

何か違った。

お陰で手術を受ける覚悟ができた。

普段ほとんど電話をしてこないのに、

手術の前夜に電話してくれた事は

本当に不思議な事だった。

 

とうとう、手術当日。

心のどこかで期待していた進行流産にもならなかった。

 

前夜は夜10時以降から飲まず食わずである。

それは術中にまれに吐いてしまう事があり、

それが喉につまると大変だから、との事だった。

 

夫が休みをとってくれたので、付き添ってもらう。

確認の為のエコーを二人で見る。

やっぱり、ダメだった。

と、ぼんやり、していた。

先生が、気を遣ってくださっているのか

「出直しだね」

と何度もおっしゃった。

 

手術する先生から手術についての説明があり、

同意書を渡される。

説明を聞いていたら、涙が出た。

 

それが終わると病室に通された。

4人部屋で、それぞれカーテンがついている。

誰かのお見舞いは行った事があるが、

自分が病室に入るなんて、考えた事もなかった。

 

手術用の服に着替え、点滴をする。

看護士さん曰く、

「水分補給みたいなものですよ」との事。

そのせいか、飲まず食わずなのに、

トイレに点滴持参で何度か行った。

夫はその度に点滴を運んでくれた。

 

ネットで手術の前に

ラミナリアというとても痛いらしい、

子宮口を広げるものを入れるとあったが、

経産婦だからかそれはなかった。

 

かなり、手術が重なっていたのか、

点滴をして随分待たされる。

同じ部屋の方々は殆どが同じ手術を受けるようだった。

 

そのうちの1人が30分経つか経たないかのうちに、

手術をして戻ってきた。

カーテン越しに聞いていたが、ベッドに移されてしばらく経ち、

「~さん、終わりましたよ、~さん、起きてください」

とその方をゆさぶる看護士さんの声がする。

術後はやはり、すぐには目覚めないものなんだな、と思う。

 

手術で気になっていたのは、全身麻酔だ。

親知らずを抜く時に部分的な麻酔はした事があるが、

手術を受けた事がないので、当然全身麻酔は初めてだ。

お酒に強いと効かないと聞いた事がある。

別に強いという訳でもないが、飲む事は飲むので、、

で、もし、途中で麻酔がきれたら?もし、麻酔が身体に合わなかったら?

 

でももう遅い。

筋肉注射とぼんやりするという点滴を静脈に入れられた。

軽くぼんやりするが、トイレにも行けた。

 

間もなく手術室へ運ぶベッドが来て、それに移動し、手術室へ。

エレベーターに乗る前に夫にバイバイしようと思ったが、

間に合わず、戸は閉まってしまった。

 

恐ろしい冷たい手術室を想像していたが、そんな事もなく、

ピンク色の感じの部屋で、オルゴールの何か、曲は忘れたが、

知っている曲が流れており、ちょっとホッとした。

 

足を固定し、

看護士さんが、私の体重を言うと、

「3ミリ」と先生が言った。

麻酔の量だな、と思った。

「3ミリ入りました」

と看護士さんが言ったら、もう、違う不思議な世界にいた。

 

正方形の全部がソファーでできているベージュ色のへや。

ソファーの間の細い隙間を通り、何かを求めて、

すごい速さで違う部屋へどんどん移動する。

同じような正方形の部屋が次々に現れる。

真っ赤な部屋もあった。

移動し続けて、どこからか、「あーーーーーーー」

と声がした。

私も同じように声を出さなくてはと思い「あーーーーーーー」と真似して言う。

どこまで、これが続くのだろうと思う。

手術を受けに行くのだろうか、と考える。

そのうちに何だか、痛くて、「痛い痛い」と言うのだが、

「いあい、いあい」になっている気がする。

看護士さんの「終わりましたよ」という声がする。

看護士さんをよく見ようと、目をこらすと、

ベージュの部屋のソファの映像がだんだん薄くなり、

元に戻った。

眠っていたというよりも、現実の世界の上にもう1つ世界があり、

そこにいた、という感じだった。

「終わったんですか?」

とろれつがまわらぬまま聞いた。

 

時計を見たら麻酔を入れてから20分位しか経っていなかった。

 

気になったので、看護士さんに声が出ていたかどうか聞くと

最初は静かだったが、後半声が出ていたという。

やっぱり、「あー」と実際言っていたんだと思った。

看護士さんは「この麻酔は悪夢を見る事が多いんですよ」と

おっしゃった。

 

移動ベッドで病室に戻る途中、

「ああ、もうおなかに赤ちゃんいないんだ」と

思ったら、涙が出た。

看護士さんがティッシュを渡してくれ、

「今はいっぱい泣いてくださいね」

と優しい言葉をかけてくださった。

 

完全に目が覚めたまま

病室のベッドに戻り、点滴を受ける。

夫は手を握ってくれていた。

涙はもう出なかった。

特に眠くもなく、痛くもなく、

ただ、とても喉が乾き、おなかがすいていた。

 

すぐにトイレに行った。

トイレに行けたら、何か飲んでもいいと言われていたのだ。

看護士さんに、オッケーをもらい、夫に飲み物を買ってきてもらう。

 

おなかがすいたので、夫にパンを買ってきてもらう。

夫が、先生に何か食べてもいいかと尋ねたら

あまりの早さに驚いていた、との事だった。

術後20分位だった。

 

おいしいパン屋さんが近くにあってよかったと思った。

すぐに夫が買ってきてくれ、すごい勢いで二人で食べた。

夫も私に気遣って朝食を抜いていたのだ。

 

術後の軽食が出る病院もあるらしい事はネットで知っていたのだが、

本当は出たのだろうか?

他の方はどうしていたのだろう。

 

術後の診察をしなければならないのだが、

夕方の診療が終わるまで病室で待たなければならず、

少し眠ったり、テレビを見たりして待った。

その間、夫が学校から帰った子供を連れてきた。

 

その間同じ部屋の方が1人帰ったようだった。

 

ようやく夕方になり、診察をしてもらう。

術後に入れていた綿を抜く。

それが入っていたなんて、気付かなかった。

それに驚いた。

出血もしていたのに??

また、連休明けに術後の経過を診てもらう。

 

5日分の抗生物質フロモックスと消炎酵素ダーゼン

子宮収縮止血剤メテナリンをもらって帰る。

 

朝9時前に家を出て、帰ったのは夕方5時過ぎだった。